喧嘩上等







10代目の右腕として日々10代目のおそばにつき10代目をお守りしているオレには、本当はあってはならないものだがどうしても苦手なものがある。苦手なものということはそれはオレの弱点という意味でもあるからあってはならない。あってはならないが、これだけはどうにもならない。その一つ目はまず姉貴。これは当たり前というかわかりきったことだ。そして次に姉貴の料理。姉貴はアレでも血を分けた親類だから一応除外はするが、姉貴の料理はこの世に存在してはならない。そして苦手というほどでもないが大嫌いなものがもうひとつだけある。それは、

「獄寺隼、獄寺隼、大至急生徒指導室に来なさい。」

そう、この校内放送だ。オヤゴサマからオアズカリしている大事な大事な生徒の個人情報を学校周辺の地域にまで聞こえているんじゃないかと思うほどの音量でだだ流しにしているこの校内放送。お前らは個人情報保護法を何だと思っているんだと先公1人1人の首根っこつかまえて説教して周りたいが10代目の護身という指名を全うする為にはそんなくだらないことにうつつを抜かしている場合じゃない。セキュリティのなってないこの建物の中じゃいつなんどき敵が襲ってくるかわかったもんじゃねーからな。流石に10代目の御名前がこのくそくだらねー校内放送(もはや校内じゃねーくらいの音量だが)でばらまかれたとあっちゃそんな悠長なことも言ってられないが。まずは職員室、放送室を爆破。そして次に10代目の御名前が聞こえたと思われる地域を爆破。このへんは独断だ。聞こえていようがいまいが疑いの芽はぶっつぶすに限る。それから・・・

「ご、獄寺君?考え事している途中悪いんだけど、」実に心配そうな顔で10代目がオレに質問する。
「なんすか!?」
「呼ばれてるよ・・・?」
「えぇ!!そうっすね!!」
「え、あ、行かなくていいの?」
「なんでですか?」
「だ、だって先生に呼ばれてるし・・・」
「いいんすよあんなもん。どうせ昨日はったおした他中のやつらについての説教っすから。」
「また喧嘩したの・・・。」10代目はうつむいてしまった。
「げっ、あの、絡まれたんでちょっと抵抗しただけっすよ!!」
「本当に?」信じられない、という風な様子で。
「安心してください!!命に別状はないっす!!」
「じゃぁなんで呼ばれるんだよ・・・もう。」
「それは・・・。」
「ほら、行ってきなよ。待ってるから。」
「そんな!!10代目をお待たせするわけには・・・」
「いいから行く!!そうじゃないと・・・」
「そうじゃないと?」
「そ、そうじゃないと・・・えっと・・・」
「な、なんですか10代目、」

「そうじゃないと、な、泣くよ・・・!」

「(まじすかーーーー!!!!)」
「ううう嘘じゃないからねっ!!!」
「わっ、わかりました10代目、いってきます、行きますから!!!」
「いってらっしゃいっ!!!」

ぶんぶんと千切れるんじゃないかってくらい手を振る10代目から離れがたかったが泣かすわけには行かない。指導室に近づくにつれてもあんと紫色の臭気が濃くなっている。そんな気がするだけかもしれないが。発信源の前に立つ。ドアをがらがらとやかましい音を立てて開けると真っ赤な顔のブルドックが待ち構えていた。

「獄寺。なんで呼ばれたかわかってるな!!??」
「るっせんだよブルドック。」先手必勝。気合で負けたらそこで勝負がついちまう。
「なっ!!先生に対してなんだその言い草は!!!」
「うっせーからうっせーっつっただけだろーが。」
「お前はいつもいつもそうやって目上の者を馬鹿にするような態度をとりおって!!!」
「これが普通の態度だ。馬鹿にしてるわけじゃねーよ。」
「だったらその、乱暴な言葉遣いをやめんか!!」
「してねっつってんだろーが。勘違いしてんじゃねーよハゲ。うっせんだよハゲ。」
「はっ、ハゲハゲ言うな!!!」
「あんまり怒ってっと血管ぶちきれんぜ。」
「お前が怒らせてるんだろう!!??」
「あ、山本。」
「なっ!!どこだ!!!あいつは今日も補習をさぼりおって今度という今度は・・・っていないじゃないか!!!」
「誰もいるなんていってねーよ。山本っつっただけだろーがハゲ。」
「教師を馬鹿にするのもいい加減にしろ!!!」
「してねーっつってんだろうが!!あぁ!?何回言わせりゃ気が済むんだこのうすらハゲ!!!」
「ハゲ言うな!!」
「用件すましてさっさと帰らせろや!!10代目がお待ちしてんだぞコルァ!!!」
「お前が先生を怒らせるから話が進まないんだ!!!」
「あ、山本。なんでいんだよ」
「もうその手にはのらな・・・」

指導室のドアを指差す。いや、今度は嘘じゃないってせんせ。マジほんと冗談じゃないっすよ。オレはいつでも大真面目っすから。

「あ、せんせ。こんちわ。」
「お前・・・!!!!どうして・・・!!なっ・・・!!!」口をパクパクさせてみたり俺達を交互に見たり指差してみたりとブルドックは忙しい。目があと3つくらいなけりゃ足りないんじゃねーか?
「いるっつっただろーが。生徒も信じれねーのかよ。最低だな。」
「ははっ。だなー。」
「〜〜〜〜山本ォッ!!!」
「ん?なんだ?」
「この前の補習もサボったうえに今日も来てなかったそうじゃないか!!!」
「わりぃわりぃ、大事な彼氏と会う約束してたんだよな。」
「彼氏だと!?ふざけたことを言うんじゃない!!お前はホモか!」
「まぁ、結果的にはそうっすね。」
「照れるんじゃない!!!気持ち悪い!!!」
「や、でも先生はちょっと無理っすね。」
「こっちだって願い下げだ馬鹿もん!!!!って獄寺!!!教師の目の前で堂々と煙草を吸うな!!!」
「ハゲも一本どうだ?イライラすんのって多分ヤ二切れだぜ。」
「先生は禁煙中だ!!!そしてハゲじゃない!!!」
「ようやくハゲを否定したかうすらブルドック。」
「うすらブルッ・・・!!!」
「はいはい。っつーわけでこいつ借りるわ。じゃぁな、ブルドック。」
「なんかそーゆーことだからさよなら、せ・ん・せ・い。」
「お前、ブルドッ・・・!!待て山本!!!獄寺!!!こらーーっっ!!!!」
語尾に不愉快なハートマークがつきそうな勢いで、声をそろえてもう一度。

『さようなら』

指導室を(本当に不愉快極まりないが)野球馬鹿に手を引かれて走る。やっぱいくら馬鹿っつってもエースはってるだけあって早かった。多分オレ1人で走っていたらブルドックは当然追いつけないにしろ、悔しいがまくことは出来なかったと思う。煙草の所為で息切れが酷いオレに対し、馬鹿が汗一つかかないでいるのが癪に障る。

「・・・ぐぇ・・・ゲホッ・・・死ぬかと思った・・・。」
「なんだよ獄寺、もうへばっちまったのか?」
「うっせぇ・・・。てかいい加減手ぇ放しやがれ。」わりぃわりぃと反省の色を全く見せずに謝る馬鹿。
「オレが来なかったらブルドックに追いつかれてたかもな。」
「だっ、誰もてめーに来いなんて頼んでねーよ。」
「そういうかと思って一応断ろうとしたんだけどなー。」
「断る?」
「頼まれたんだよ。ツナに。あんまり遅いから行ってくれねーかって。」
「なっなんでだよ。」
「ツナがあんまり心配そうな顔すっから断れなかったんだよな。」
「10代目・・・。」
「すぐ行ってやれよ。今にも泣き出しそうだったぜ?」
「ば、馬鹿なこと言ってんじゃねぇっ!!!くたばれ馬鹿!!!じゃぁな!!!」
「おう、また明日な。」

ぜぇぜぇと喘息のように荒い息を吐き続けながらまた走る。2,3度こけながら昇降口に行って10代目の姿を探すとガラス戸の向こう側に座って待っていた。

「10代目、お待たせしました・・・!!!」
「獄寺君・・・?」振り向いて10代目が立ち上がる。
「すみません・・・遅くなって。」
「あ、謝らないで!!??行けって言ったのも勝手に待ってたのもオレだし、それに」
「いえ!!!もうしわけございませんでした!!!」

自分の不注意で(一方的に絡まれるのは自分でどうこうできる問題じゃないが)10代目を心配させてしまったという、己の不甲斐なさが本当に情けなさ過ぎて怒りさえ湧き出てくる。地面に頭を擦り付けながら土下座をするオレの頭を何かが撫でた。

「もう、喧嘩しちゃ駄目だよ?」
「はいっ・・・!!!」
「呼び出しされたら駄目だよ?」
「はっ、はいっ・・・!!!!」
「顔上げて!さ、帰ろう。」10代目は何事も無かったかのように笑う。オレはこの先、あと何度この笑顔に助けられるのだろう。
「10代目!!!!」
「何?」



「〜〜〜大好きっす!!!!!」




管理人の実体験はいってますorz
いつか書いたある作品と少しリンクしています。
伊槙様、相互ありがとうございますね!そして遅くなり申し訳ございませんorz
2007/3/22 (Thurs.)


rutiさんから相互記念に頂きました、獄ツナでございます!!
最近獄ツナ熱が再上昇気味な私が、図々しくも頼んで書いてもらいました。
こんな素敵小説に巡りあえるとは!
いける…これでご飯3杯以上いける……!!
なんて素敵な獄ツナなんでしょう(うっとり)ごっくんが可愛いくて仕方がないです!><*
ごっくんの頭の中は本当にツナの事ばかりですね!
『獄ツナでお願いします』だけでこんな素敵な小説を書かれるrutiさんは神だと思います^^*

本当にありがとうございました!!